あかね雲
概要: 『起きよっ!』 蛇の怒鳴り声に、あなたは飛び起きました。 場所は寮の自分の部屋です。退学手続きはしましたが、今月いっぱいは居てもいいという許可をもらったのです。 時刻は、真夜中でした。あなたはかすむ目を擦りながら問います。「な……に?」『はよう起きろ。お主は、恋人を無くしたいのか?』 いっぺんに事態を理解しました。「ダリルが?」 壁掛けから服をひったくってあなたは飛び出しました。「蛇! どこにいる!?...
概要: 翌朝の目覚めは、気だるく、温かく、満ち足りたものでした。 すぐ隣のぬくもりがいなくなって、あなたは目を覚まします。体を起こすと、足の間に痛みが走りました。「つ……」 すぐ近くにいたダリルが慌てたように駆け寄ってきました。「だいじょうぶ?」 立ち上がるのにも、衣服を整えるのにも、ダリルが手を貸してくれました。「ごめん、昨日俺が無理させたから……」 あなたはその言葉に眉をあげます。 体の細いあなたがダリ...
概要: エルフ族の青年はため息をついた。「……だめですね。この結界、外側からでないと破れません」 四人が閉じ込められている部屋には結界があり、それがにっちもさっちもいかずに四人が閉じ込められている原因だった。 ちなみに、脱出魔法に関しては並ぶ者ない小人族はこの結界もかいくぐれる。 だが、モノが結界なだけに、牢の様に鍵を盗んできて脱獄、というわけにもいかないのだ。 小人族のパルには戦闘能力は皆無。彼一人...
概要: 「この城の奥に、ゲートがある。そこをくぐると、数代前の魔王が拵えた迷宮に移動する」 魔王は念押しした。 「いいか、そこに行けるのは乙女だけ、しかも、その迷宮の内部は魔物だらけだ。本来は、通行印を持っていれば素通りできるはずなんだが……」 魔王は苦い顔になって言う。 「その通行印が、どこにもなくてな。魔王は、不意の死に備えて重要事項をきちんと引き継げるよう用意しておく義務があるんだが、前魔王はそれを怠...
概要: 「一級魔術師、かあ……」 呟きに、あなたはそっとダリルの様子を窺います。 嫌われたのかと、怯えながら。 周囲が思っているよりずっと、あなたは人の心の機微に敏感でした。 あなた方の目の前には、いつものように一発で殺した力竜が三体倒れています。 遠隔で敵を察知し、狙撃。 それだけで、敵は倒れました。拍子抜けしてしまうほど簡単に。「ダリル……?」 ダリルは振り返り、あなたの表情に気づいて慌ててかぶりを振りま...
概要: 翌日、二人が向かったのは「銀嶺(ぎんれい)の森」という歩いたら往復十日ほどかかる森です。 借り出した騎獣は走蜥蜴という種類で、見かけは大きな二足歩行する蜥蜴です。よく人に馴れ、暑さにも強く、足も早く、魔と遭遇しても怯えて立ちすくむことはありません。更には弱い魔ならばその匂いだけで近寄りません。冒険者御用達、ともいわれる騎獣です。 あなたはもちろん騎乗できませんので、前にあなた、後ろにダリルが乗って...
概要: ズタズタの服を着替え、身支度を整えてから、テーブルにつく。 「ひとつ確認したいが、お前は、生娘か?」 少女は当たり前の表情をした。 眉と眉を接近させ、口元をへの字にし、とても嫌そうな顔になったのだ。 それでも答えを口にしたのは、わかっていたのだろう。乙女である、ということが、ある種の魔術の必要条件でもある。 「……そうよ」 「では、依頼したい。ただし、これは、口外無用だ。……この国には、あるもの、が...
概要: 二人で依頼票を見に行ったところ、ちょうどいいものがありました。 騎獣を借りて、日帰りできる範囲内で、危険度は高くていいから実入りのいい依頼という条件にぴったりのものです。 竜種の最下位、第十階位の赤蜥蜴の討伐。 一匹討伐するごとに最低金貨十枚。赤蜥蜴を持ち返ったら、最低でも金貨十枚。状態により要鑑定のうえ上乗せ。 騎獣の借り賃が一日金貨一枚ですから、成功すれば充分もとがとれます。「今日は装備を整...
概要: この知らせは、学院内を電撃の速さで駆け廻りました。 特に顔色を変えたのは、あなたのファンクラブ(もちろん非公認)と、あなたに以前告白して無惨に木端微塵になった人々です。 一体どうして、一体誰だと気炎を吐く彼らに構うことはなく、あなたは淡々と退学準備を進めました。 あなたの取っていた科目は「魔力拡張」、「魔力属性特化・氷」、「魔力属性特化・風」、「魔力探知」、「詠唱省略」です。 このうち必修は魔力...
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