あかね雲
概要: 部屋に戻り、私は先ほど投げられた服に着替え、ぴしりと背筋を伸ばし、しゃちほこばってルーランに尋ねました。「私は何をすればいいでしょうか?」 掃除、洗濯、今の私ができるのはそれぐらいです。……炊事、はここの食材を見たことがないのでイマイチ自信ないですが、日本ではちゃんと自炊していましたから、食材の特徴や調理法を教えてもらえれば何とかなる自信があります。 人格に少々……多少……かなりの問題はありそうですが...
概要: キールくんはさっさと帰って行きました。 帰る時に、ひと騒動ありました。……私だけに。 客人を見送るという日本人の習性に基づき、恩人であるキールくんを外まで見送ったところ、事件は起きました。 この家は湖のど真ん中にあります。 キールくんは、その水の上を「歩いて」向こう岸に辿りつくと、姿を消しました。 水の上に浮かんだ、んじゃないです。歩いたんです。 銀髪の美少年が、水の上に足を踏み出すたびに、輪を描...
概要: 銀髪。銀の瞳。白い肌。中々将来有望そうな少年。 十歳ぐらいの子どもの姿に驚きましたが、よく考えれば彼らはエイリアン。 ルーランの年も聞いていませんし、成長速度が一緒である保証はありません。 まして、精霊との仲立ちをやっていて、皇帝陛下より偉い、なんていうこの子が見た目通りの年であるはずがないですよね。小説ではよくあるアレですよアレ。若づくりの実年齢年寄りさん。 私は一瞬だけ茫然としましたが、すぐ...
概要: 「この星では、あなたより偉い人は皇帝陛下しかいないほど、あなたは偉いんですね?」「質問の意図が不明瞭だな。本音と建前、という言葉はお前の世界にもあったはずだが?」 痛いところをついてきます。「ぐ……っ。では本音では、皇帝陛下以外にあなたに命令できるひとはいないということでいいんですか?」「私は建前では一切の公的地位を持っていない。建前では、ひとりの民と変わらない。が……シミナーを一市民と同列に扱う人間...
概要: 「偉い、か……」 ルーランは、酷く複雑そうな醒めた微笑を浮かべました。「お前の基準では、偉いうちに入るだろうな。私に命令できる人間は一人しかいないという観点で」「一人って……それは」「この星を統べる皇帝だ。レイオスの呼び方では緑の座というな」 ――皇帝陛下ですか。 皇帝陛下しかルーランに命令できないって……なんですかそれ!「私に公的な地位はないが……、そうだな……お前の世界で例えて言えば、個人が原子力発電所を...
概要: しばらくルーランは深々と頭を下げる私をじっと見ていました。 ぽつんと。「単なる気まぐれだ」「はい。それでも、私は、あなたに助けてもらいました。誰かに助けてもらったらお礼を言えと……私は、故郷にいる母に、厳しく躾けられました。だから、ここは私があなたにお礼を言う場面で、間違っていません」 彼が嘘をついているという可能性はあります。 でも、たぶん、それはないでしょう。 「嘘をつく」程の価値を、彼は私に...
概要: さて……ご飯タイムが終わりましたが、そうなると……ごめんなさい。 聞きたいことが、行列の終わりが見えないほどたくさんあります。 ――実験動物。 すんでのところで免れた運命が、ぞくりと背筋を震わせました。 さっき、迎えの人は、一言も待遇などを口にせずに連れていこうとしました。それが普通です。 誰だって、これから実験動物にする相手に、「お前をこれから実験台にします」なんて告知しませんよね。 ルーランはあっ...
概要: 私は、わたしを実験動物にするために連れに来た人がルーランの一言で帰っていくのを、信じられない思いで見つめました。 そして、その目をルーランにもどします。 ……この人はどんだけ偉いんでしょうかねー。 というか、あの態度からして、いつもいつも諦めさせられてきたんでしょうねー……アワレだ……。 迎えの人がすごすごと帰ったあと、戸惑ってしまった私はルーランに確認しました。「い、いいんですか?」「構わん。お前の...
概要: どうやら、ルーラン(根性悪)が、レイオスの人は全員銀の髪銀の瞳白い肌、といったのは嘘ではないようで、迎えに来た二人の男性(たぶん)も、同じ色彩を身にまとっていました。 それはイコール、私がここで逃走しても町に出たら一発で見つかる、ってことですよ……ね。 髪はまだ隠せばいいとしても……日本人の黄色い肌は、隠すのが難しいでしょう。 迎えに来たお二人は、細いお身体です。 骨格自体が違うのかな? それとも女...
概要: さっきの疑問に舞い戻ります。 もし、私が西洋人のコスプレした人を見たら、まかりまちがっても「異世界人」だなんて思いますまい。 染めてるだけ、変な服を着ているだけ、そう思うでしょう。「こちらの方は、髪を染めたりしないんですか?」「染める?」 くっと、男性はあんまり良くない感じで唇を歪めました。 う……なんだかびんびんセンサーに来ますね……。 いま、私、馬鹿にされたんじゃないでしょうか。 異文化コミュニ...
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