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あかね雲

2015年11月の更新履歴 [前月]  [次月]

2015/11/30
勇者が魔王に負けまして。] 3-31 炎神の領土
2015/11/30
勇者が魔王に負けまして。] 3-30 利用しあいましょう
2015/11/30
勇者が魔王に負けまして。] 3-29 仕方ないので妥協しました
2015/11/30
勇者が魔王に負けまして。] 3-28 肉体はゾンビですが中身はちがいます
2015/11/30
黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集] 理想と現実のはざま 3
2015/11/30
黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集] 理想と現実のはざま 2
2015/11/29
黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集] 理想と現実のはざま 1
2015/11/29
勇者が魔王に負けまして。] 3-27 この状況での最善手
2015/11/29
勇者が魔王に負けまして。] 3-26 勇者ではありません、やりたいようにやっただけです
2015/11/29
勇者が魔王に負けまして。] 3-25 勇者の恩寵
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勇者が魔王に負けまして。] 3-31 炎神の領土

 概要:  その町にスゾンを置いて、一行は北北西に進んだ。  旅は至極順調で、予定より少し早目に、炎神の御座(みくら)の外縁部――砂漠に辿りついた。 「……なんだか、意外と、栄えているな」  意外そうな顔で言うのは、ダルクである。  フィアルも同感なのか、口には出さなくても似たような表情で辺りを見回している。  炎神の御座は、くっきりとした境界線がある。黒土が、ある一線を越えると、さらさらとした薄い茶色の砂に変わる...

勇者が魔王に負けまして。] 3-30 利用しあいましょう

 概要:  最後に、少女はスーパーゾンビあらためスゾンにたずねた。 「私たちにとって、あなたを調べることへの利は大きいわ。でも、あなたの利は?」 「あ、それは簡単です。押してダメなら引いてみろ作戦です」 「……なにそれ」 「つまり、力ずくは難しいので、貸しを山ほど作って、その貸しを盾に、協力を求めるやり方をしようかと……」  少女はふっと笑う。 「そういうつもりでいるのなら、いいわ。あなたの力には利用価値がある。お互...

勇者が魔王に負けまして。] 3-29 仕方ないので妥協しました

 概要:  ゾンビが町に住みつくのも嫌だが、少なくとも、他人の体を勝手に使用せず、権利を侵害しないという一点において、勝る。  捕縛したところで、他人に憑依されたらそこまでだし、他の手段も、同様である。 「でも、こう言っちゃなんだけど、サンローランでのあなたの住み心地、悪いと思うわよ? だって、一目であなたをゾンビと見抜けるひとたちばっかりだもの」  まず獣人族は、一発でわかる。微かに漂う腐敗臭によって。  次...

勇者が魔王に負けまして。] 3-28 肉体はゾンビですが中身はちがいます

 概要:  少女たちは一旦宿に戻ると、その場所へ急行した。  死霊術師も操り人形を通じて不穏な気配を察知し、逃げようとはしていたようだが、そもそも、飛行呪文を持つ彼女たち以上の逃走速度の人間など、滅多にいないのである。  無事、死霊術師を捕獲した。死霊術師は珍しい人族の魔力持ちであったため、利用価値は山ほどあり、その町の冒険者ギルドに放りこむ。  そしてその日のうちに町に戻ったところ、驚くべきことに、まだあの...

黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集] 理想と現実のはざま 3

 概要:  ジョカが黙った。  静かで結構。  リオンは匙が止まっていた食事を再開する。  リオンが皿を九割がた空にしたころ、静かだったジョカは恐る恐る聞いてきた。 「俺を愛しているから頑張ってくれた、と?」 「……あなたは、私を何だと思っているんだ?」  こう言っては何だが、リオンは自分をそこまで忍耐強い人間とは思っていない。  苦痛で苦痛で苦痛で仕方がないようなことをやるには、相当強い理由が必要だ。  リオンは深...

黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集] 理想と現実のはざま 2

 概要:  食事するリオンをジョカはやや目を丸くして見ていたが、自分も配膳された食事に手を付けた。  一口食べて顔をしかめる。 「ああ……リオンが作った料理が食べたい……」 「そうだな。早く家に帰りたい」  リオンも同意する。  まずいものはまずい。  こんな食事より、自分で作った方がずっと美味だ。  リオンの当初のもくろみ通り、リオンは自分が作った物なら失敗作でも口にすることができた。今ではそれなりの腕になった自信...

黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集] 理想と現実のはざま 1

 概要:  美味しいご飯が食べたい……。  リオンは緊急性は低いが切実な願いに直面していた。  リオンは意外でも何でもないが、口が肥えている。  リオンは元々、王位継承権第一位の王室正嫡の長子である。  そういう生まれが生まれで、手の込んだ美味な食事以外は出されたこともない上に、どこぞの激甘魔術師がリオンをさんざん甘やかし、美味しい出来立てお菓子やら美味しい出来立て熱々料理やらを振舞っていたせいだ。  なお、魔術...

勇者が魔王に負けまして。] 3-27 この状況での最善手

 概要:  突然戦闘中止になり、事情がよくつかめていないマーラに、少女はしぶしぶながら説明した。 「……かれ、この間会った、憑依する種族が入ってるから。気をつけて」 「……ええと、つまり。あなたは、いま、その身体に憑依……しているわけですか?」 「はい」  死人返りの青年は、にっこりと笑う。 「この間はドタバタしてまして、いろいろ無用な敵愾心なども煽ってしまい、断腸のみぎりです。僕としては、あなたがたと敵対する気なん...

勇者が魔王に負けまして。] 3-26 勇者ではありません、やりたいようにやっただけです

 概要:  人気がなく、饐えた吐瀉物と汚物の匂いのする路地の奥で、二人の人間が対峙していた。  一人は長い黒髪で、一人は魔術師がよく着るようなローブで全身をすっぽり覆っている。  長髪の青年が言う。 「……まさか、生きていたとは思いませんでしたよ」  その呟きに、あははっと、ローブを着た人物が笑う。 「あの状態で生きてるわけないでしょ? 馬っ鹿じゃない?」 「え……」 「し、ん、だ、の。ぼくは。かんっぜんに、完璧に、...

勇者が魔王に負けまして。] 3-25 勇者の恩寵

 概要:  飛行中、マーラが体の不調を訴えたのでその日はすぐに町に下りて宿をとった。  寝台に伏せったマーラの隣で、少女は額に手を当てた。 「……熱があるわ。しばらくこの宿に泊まるから、ゆっくり休んで」  森の精霊族は繊弱で、繋がりを持った森から一歩出ると、こうして始終体調を悪くする。(そして、マーラは旅をする必要上、森と繋がりを持っていない)。  どの種族より高い魔力の、代償だった。  ――彼女が看病に必要な道具...
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