概要: 魔術師である彼は、利害で誰かを選ぶ必要などない。 好いた演技も、恋したふりも、両方必要ない。心のままにふるまう事が許される。 だから。 ――彼は、本当に前の自分が好きだったのだ。 そう思った時、リオンの胸に湧き上がってきたのは、名称がついていない感情だった。 強いて言えば、憧憬に近い。 「……あなたは、魔術師で、何でもできる。比べて私は地位と身分を除けば手に何も持たない若輩者だ。どうして私なんか...
概要: ジョカはすんなりと教えてくれた。 魂に刻まれたまことの名。普通のただ人には意味のないものだが、魔術師にとってはとても重大な名。それが真名だと。 「絶対に誰にも教えちゃいけない」 と、ジョカはリオンに念を押した。 「もちろん、他の人間がいるところで名前を呼ぶのもだめ。でも、二人きりの時はなるべく呼んで欲しい」 「わかった」 頷いたが――ジョカの自分への態度がありえないほど当たりが柔らかくて、気持ちが...