あかね雲
概要: 少女がパルに尻を蹴飛ばされ、デートの準備の買い物に行くその前夜。 もちろん、マーラはダルクにしっかりと釘を刺しておいた。 優先順位としてはコリュウが上だが、ダルクを放置して問題ないはずもない。 何と言っても彼らは高レベルのパーティであり、ダルクは高位の魔術師である。 嫉妬のあまり……なんてことになれば、大地の勇者の名声は地におちるだろう。そして、監督不行き届きとして、少女も罰を受ける。 マー...
概要: 生まれて初めてのデート、なのだけれど。 その前哨戦で少女は挫折していた。 デートの準備、すなわち身支度。 恥ずいよ、恥ずかしいよ、どうしていいのかわからないよ~。 ―――相変わらずの少女の嘆きに、説教するのはもちろん、パルである。 「テメーはじゅうぶん可愛いんだ! 身だしなみをキチッとして、装身具の一つや二つすりゃあ見違える! 選んでやるからとっとと来い!」 と、尻を蹴飛ばされる勢いで、アクセ...
概要: その日、少女とパルが出掛けたあとで、伏せっていたマーラはコリュウを呼んだ。 「なーに? マーラ」 ぱたぱたと飛びながら、コリュウはマーラに尋ねた。 「すごく大事な話があります。ちょっとその寝台の上に座ってください」 「うん。なに?」 コリュウは滑るように羽根をたたみ、前脚と後ろ脚を揃えてちょこんと寝台の上に立つ。その様は、鳥類が枝にとまる時によく似ていて……。 ―――あの子はコリュウがこのポーズをと...
概要: パルが宿に戻った時、部屋の空気はどんよりしていた。 原因は―――二つある寝台のうち入口から見て右側の寝台の中央で、とぐろを巻いている竜である。 竜族の表情は判りにくいものだが、さすがにコリュウとは長い付き合いなので多少はわかる。 コリュウはいじけていた。 パルは視線をエルフのマーラに移す。 寝台の敷き布をよじ登り、ベッドの上で腰掛けているエルフの膝に昇ると、そこでやっとマーラは小人に気づいた。...
概要: 「ところでリオン、こいつどうする?」 ジョカが示したのは、あの、青緑色の小さな蛇だった。 石肌がむき出しの床の上で、とぐろを巻いている。どうやら眠っているようだ。 これがまるで縁のない状況ならリオンも適当に処分するのだが、さすがに一時とはいえ自分の魂が宿っていた生き物だと思うと、殺してしまうのは躊躇われた。 死ぬかもしれないと思った恐怖、戦慄、全部覚えているのだ。 「うーむ……。いっそ飼うか?」 ...
概要: さすがというべきか、なんというべきか。 蛇の体は、断崖絶壁から雪の中に落とされても生きていた。 というか、ぴんしゃんしていた。 人間なら断崖絶壁の最後まで転がり落ちてお陀仏にまちがいないが、モノは小さな蛇である。 断崖絶壁とはいっても、多少の角度はある。 岩壁がナイフで切り落としたように垂直におちているのではなく、斜めの角度がついているのだ。 それでも人間ならばとても掴まることなどできない...
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