あかね雲
概要: その腕輪は、適当に少女が装身具屋で買ってきたものに、古びて見えるよう多少の細工をして、マーラがちょちょいのちょいで作ってくれた物である。原価は、この食事より安い。 「……こんな高いもの、もらえない。というかね、厳重に隠してしまっておくか、身につけておくかしたほうがいいよ? 君が知らないだけでさ、すごーーーく、高いんだから」 「……どれぐらいするの?」 と聞いてしまったのは、借金持ちの身の悲しさであっ...
概要: うきうき、らんらん、という書き文字を背中に背負ったアランが待ち合わせ場所についたとき、少女は男に声をかけられている真っ最中だった。 「お断りします」 「そんなこと言わずにさー。お昼おごるよ」 「いりません」 「まあまあ。美味しい料理屋知ってるんだ。行こう行こう」 男はきっぱり断る少女の腕をとり、強引に引っ張ろうとするのだが……その顔はすぐにあれという表情に変わる。 足に根でも生えているように、びくと...
概要: その気になれば王侯貴族のドレスや宝石を山ほど買える少女は、粗末な、村娘としておかしくない程度の精一杯のおしゃれをした姿で、待ち合わせ場所に佇んでいた。 そうして佇む少女は、ハッとして目を吸い寄せられる何かがあった。 歴戦の冒険者である事が、にじみ出るのだろうか。可愛いだけの女性にはない、どこか凛とした不思議な魅力がある。 ちなみに、今回のお供は誰もいない。 少女はパルに「ついてきて~」と情け...
概要: にっぱにっぱにっぱにっぱ。 アランが手はしっかり動かしつつ、顔は不気味なにやにや笑いを全開にしていると、それを見咎めた人物から突っ込みが入った。 「……幸せそうでいいな」 そう言ったのは青黒い肌の魔族の少年で、アランは振り返りもせず、不気味なにやにやをそのままに言い返した。 「まったくだ。幸せで幸せだよ羨ましいかー?」 「…っ。なんでだ! 私の方がずっと将来性豊かなのに! そりゃあ年はちょっとばかり...
概要: 伯爵は王子に対して拝跪し頭を下げながら、傾いていく気持ちに懸命にブレーキをかけていた。 他の人間ならともかく、王族なんて。しかも傍流ではなく本家の本流の正妃の第一王子なんて、恋をする相手としては最悪だ。 恋は最高の遊戯だが、それも楽しめる相手とならば、だ。 「そのような女と知り合ってしまったとは、不運なことだな」 「いえ、我が家の見る目がなかったということでしょう」 なお、元婚約者に報復は...
概要: 児童の性産業の参加に肯定的な人間が主役ですが、決して作者が賛成しているということではありません。 伯爵家の一室に、怒鳴り声が響いた。 「もう困ったものですよ! 若君に少しは女性に興味を持っていただかないことには、お世継ぎがおらずにこの家は断絶してしまいます!」 「ははは。女なんて冗談じゃない。親戚から手ごろな相手を養子に貰えばいいだけの話じゃないか」 「そんな夢見話をおっしゃって! そんな都合のい...
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