あかね雲
概要: 美味しいご飯が食べたい……。 リオンは緊急性は低いが切実な願いに直面していた。 リオンは意外でも何でもないが、口が肥えている。 リオンは元々、王位継承権第一位の王室正嫡の長子である。 そういう生まれが生まれで、手の込んだ美味な食事以外は出されたこともない上に、どこぞの激甘魔術師がリオンをさんざん甘やかし、美味しい出来立てお菓子やら美味しい出来立て熱々料理やらを振舞っていたせいだ。 なお、魔術...
概要: 突然戦闘中止になり、事情がよくつかめていないマーラに、少女はしぶしぶながら説明した。 「……かれ、この間会った、憑依する種族が入ってるから。気をつけて」 「……ええと、つまり。あなたは、いま、その身体に憑依……しているわけですか?」 「はい」 死人返りの青年は、にっこりと笑う。 「この間はドタバタしてまして、いろいろ無用な敵愾心なども煽ってしまい、断腸のみぎりです。僕としては、あなたがたと敵対する気なん...
概要: 人気がなく、饐えた吐瀉物と汚物の匂いのする路地の奥で、二人の人間が対峙していた。 一人は長い黒髪で、一人は魔術師がよく着るようなローブで全身をすっぽり覆っている。 長髪の青年が言う。 「……まさか、生きていたとは思いませんでしたよ」 その呟きに、あははっと、ローブを着た人物が笑う。 「あの状態で生きてるわけないでしょ? 馬っ鹿じゃない?」 「え……」 「し、ん、だ、の。ぼくは。かんっぜんに、完璧に、...
概要: 飛行中、マーラが体の不調を訴えたのでその日はすぐに町に下りて宿をとった。 寝台に伏せったマーラの隣で、少女は額に手を当てた。 「……熱があるわ。しばらくこの宿に泊まるから、ゆっくり休んで」 森の精霊族は繊弱で、繋がりを持った森から一歩出ると、こうして始終体調を悪くする。(そして、マーラは旅をする必要上、森と繋がりを持っていない)。 どの種族より高い魔力の、代償だった。 ――彼女が看病に必要な道具...
概要: サンローランの町から、炎神の御座までは、三つの国を越えていく。 そしてその三つとも、人族の国である。 地上を行くならばしばしば関門に引っ掛かり、通行税やら入城税やらを取られて難儀するが、空を行く者はそれら一切合財を無視して通過できる。 遥か上空を飛ぶ絨毯は、街ゆく人の目にも入る――はずだが、入らなかった。 魔王さまがあっさりと、隠蔽魔法と同種の魔法で、絨毯全体を覆ったのだ。 常ならば見られて...
概要: 宝石は、極めて換金に困る種類の財物だ。 それも、高価な宝石であればあるほど困ると言っていい。 多くの人間に価値を認められ、資産価値のあるとされてる財物は貴金属をはじめ、いくつかあるが、宝石はその一つだ。だが、換金の難しさではピカ一だろう。 なんせ、一律に重さと純度という素人でも判りやすい基準で取引される貴金属や塩とはちがい、宝石は、種類、色、形、大きさ、傷などでころころと値段が変わる。 つま...
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