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あかね雲

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2015/12/28
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《エピローグ》
2015/12/28
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう》
2015/12/27
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第十の村、長星(ちょうせい)》
2015/12/27
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第八の村、恒星(こうせい)、第九の村、峡月(きょうげつ)》
2015/12/26
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第六の村、流星(りゅうせい)、第七の村、水月(すいげつ)》
2015/12/26
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《春》
2015/12/26
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《襲撃》
2015/12/25
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第五の村、雲月(うんげつ)》
2015/12/25
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第四の村、浦月(ほげつ)》
2015/12/25
君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第三の村、嵐月(らんげつ)》
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君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《エピローグ》

 概要:  帰りの道は、日一日、深まる春を実感し、夏の入口にさしかかりながらの旅だった。 長星、峡月、恒星、水月、流星、雲月、浦月、嵐月、銀月。 行きに通り過ぎてきた村を、再び通る。 その、どの村でも人々の顔は喜びあふれ、コウヤは最上級の賓客として、もてなされた。 ユージーンはいなくなったが、長星の村の長が護衛をつけてくれたおかげでつつがなく旅ができた。 人が元通りの暮らしに戻るには何年もかかるだろう。 だ...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう》

 概要:  世界樹のふもとへは、村の奥にある門から出入りする。 出入りには長星の村の許可が必要だが、事情が事情のため問題なく許可は下りた。 門の前で、コウヤは戸惑った顔でユージーンを見返した。「ユージーンは一緒でなくても……」 自分が苗床になるところを見たら、衝撃を受けるだろうと気遣って声をかけると、ユージーンは真面目くさって言った。「あのな、コウヤ。よーく、この先を見てみろ」 指示に応じて、前方を見る。……門...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第十の村、長星(ちょうせい)》

 概要:  長星の村に向かう途中、幾度も顔を上げ、前方の世界樹を見た。 世界樹を見るなと言われたが、ここまで近づけば自制しようにも見てしまう。 すぐ近くに見えるというのに、一日歩きとおしても姿は変わらずやはり疲労感が増したが、三日歩きとおせばさすがに少しは近づいたのがわかり、十日歩きとおすと、そこは最後の村だった。 村の入口近くの高台から、この旅の終着点を見下ろす。「これが……」 世界樹は、無残な姿だった。 ...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第八の村、恒星(こうせい)、第九の村、峡月(きょうげつ)》

 概要:  旅を始めて早三月以上がたつが、全身に筋肉がついた気がする。 食料は、重い。 矛盾しているし、ワガママなのも重々承知しているのだが、やはり重い荷物を背負い、毎日朝から晩までひたすら歩きづめに歩いていると、重さがこたえた。 旅が進み、食料が減ってくると、不安とともにほっとしてしまう。矛盾しているが、それが偽らざる本心だった。 次の恒星の村まで行く途中、川にかかる橋を渡った。「おい、見ろよ」 顔を上げ...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第六の村、流星(りゅうせい)、第七の村、水月(すいげつ)》

 概要:  次の村までは遠かった。 コウヤの足が途中痛みを発し、魔法を使うほどではなかったので持参の薬草で湿布をしたせいで多少歩く速度が遅くなったこともあるが、最大の要因は、六番目の村流星が、滅んでいたためだった。 村は、生者の気配なく、乾いた風が吹いていた。 石造りの家の室内には埃がたまり、風が扉を揺らす音が響く。冬が来る前は植え耕されていたのだろう畑は打ち捨てられ、ところどころ生命力の強い雑草が葉を揺ら...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《春》

 概要:  ……コウヤが泣いている。その声が聞こえる。 あのクソガキ、今度は何しやがった。 お前は泣いてるよか、笑って減らず口を叩いている方がずっといいんだからいつも馬鹿みたいにへらへらしてろ。 ユージーンにとって、コウヤは側にいるだけで心地よく、ホッとできる相手だった。 仔鹿の瞳、くるくる変わる表情、嘘のないことば。 お世辞もおべんちゃらも一切なく、ユージーンをこれっぽっちも恐れない。コウヤが何かを言ったら...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《襲撃》

 概要:  雲月の村を、出立する。 あんなやり取りの後もユージーンはいつもどおりの態度で、コウヤもそれを見ていると後を引くのが馬鹿らしくなってしまい、結局いつもどおりの関係に戻った。 コウヤはユージーンが好きだった。その魔法の腕は関係なしにコウヤを引きつけたし、この旅に限ったところで、場合に応じた天幕の張り方や雪の避け方、疲労がたまった時には無理せず休息をとる勇気など、ユージーンに幾度世話になったか分からな...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第五の村、雲月(うんげつ)》

 概要:  翌朝、村長の見送りを受けて浦月の村を出立する。「次の村は?」「雲月(うんげつ)の村」 一日休息の時間をとったおかげで、足取りは軽い。 それに、次の村で半分来たということになる。 明星の村から世界樹までの道は明星の村も含めて、十個の村を経由する。だから次で五つ目。半分になる。 明星、銀月、嵐月、浦月、そして次の雲月で、半分である。 道中はおおむね順調だったが、途中、一度雨が降られた。 水滴を掌で受...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第四の村、浦月(ほげつ)》

 概要:  嵐月の村を出てから十一日目に、浦月の村に到着した。 八日の予定よりずいぶんと遅れてしまったのは、もともとの予想が「大人の男の健脚で、冬が来る前にかかった時間」だったからである。 この辺は雪はないため、ユージーンの魔法での時間短縮の効果もない。 カズツィ山の悪路に手こずったこと、全般的に冬の間に道が荒れていたこと、コウヤが小柄で、大人の男より少し遅れる足だったため、時間がかかってしまったのだった。...

君の死骸を苗床に、未来の樹を芽吹かせよう] 《第三の村、嵐月(らんげつ)》

 概要:  コウヤは曇天を仰いだ。 灰色の空は重そうに垂れ下がっているが、幸いまだ雪の降る様子をみせないでいてくれる。 翌日、二人は銀月の村を出た。 夜を徹しての雪かきをまた村人たちがしてくれたので、道は歩きやすい。 その道を、二人で黙々と歩く。 昨日のあのやりとりからずっと、ユージーンとは話をしていない。 ユージーンの方も、コウヤに話しかけようとはしなかった。だが、雰囲気は怒っているという風ではなく、むし...
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