さて……ご飯タイムが終わりましたが、そうなると……ごめんなさい。
聞きたいことが、行列の終わりが見えないほどたくさんあります。
――実験動物。
すんでのところで免れた運命が、ぞくりと背筋を震わせました。
さっき、迎えの人は、一言も待遇などを口にせずに連れていこうとしました。それが普通です。
誰だって、これから実験動物にする相手に、「お前をこれから実験台にします」なんて告知しませんよね。
ルーランはあっさり暴露しましたけど、迎えの人たち止めてましたし。止められる人じゃなかったですが。
――ルーランだって、たぶん私が聞かなければそのままだったはずです。
でも、私は何しろ無防備で善人なことでは世界的に評価の高い日本人。事前にルーランに予備情報を貰っていなければそのままホイホイついていったはずで……、やっぱり、色んな意味で、惨禍をまぬがれたのはルーランのおかげと言えるでしょう。
あんな、普通なら言いづらい実験動物行きの運命ですら、あっさり口にするのです。
ルーランは、私などに嘘はつかない人でしょう。
ルーランには申し訳ないのですが、知りたい事が山ほどあります。目下、それを聞ける唯一の相手である彼に質問することにしました。
「魔力もない……って言いましたが、私、魔法使えるようにはなったりしませんか?」
異世界物では突然魔法が使えるようになるのが定番ですが。
「馬鹿だな、おまえ」
……ぐさっと来ましたが、我慢です我慢。
「お前の体のどこに魔力があるんだ」
「か、体の問題ですか」
「あたりまえだ。身体構造自体がちがう」
「ち、ちがうんですか?」
ルーランは、色彩こそ珍しくとも普通の人間に見えるんですが……。
「むしろ聞きたいぞ。これまで使えなかったのに、どうして突然魔法が使えるようになると思うんだ? 世界を移動しただけで」
「そ、そこは異世界補正とか、大気の中に魔力の成分があったりとか……そんなので」
「私たちは、お前たち地球人のように脆弱な体ではない。体に魔力を宿して生まれてくる。寿命も長い。二本の手足と頭があるから外見は似ているが、種がちがう」
「種が……ちがう」
私は繰り返しました。
「そうだ。お前は地球で発生し、進化した命だ。しかし私たちは、ここレイオスで発生し、進化した命だ。こうまで似通った外見を持っている事自体が奇跡に等しい。種としてはまるで違う。交わったところで、子などできないだろうほどに」
いわゆる異世界物では、同じ「人間」がいる所に飛ばされるものですが、私は……違った。
厳密に言えば、彼は「人間」ではないのです。
「異星人……」
私はポツリとつぶやきました。
映画のエイリアンが思い浮かびます。あれは醜悪な外見でしたが……地球人と同じように四本の手足と頭を持って進化したら?
ルーランは頷きました。
「それが、一番近い形容だろうな」
「種が……ちがうんですね」
はああああ、とため息をついてしまいました。
それでもこれは言わねばと、私は深々と頭を下げます。
「さっきは、助けていただいてありがとうございました」
これは、人としての礼儀というものです。
お父さんと、お母さんは、繰り返し私に言いました。
人にお世話になったら、お礼を言いなさい、と。それが人の道だと。
……異世界トリップしてまだ半日。今頃、会社から欠勤の問い合わせの電話でも貰って、とっても心配しているでしょうね……。
異世界人もとい、異星人。
私にとって彼らが異星人なら、彼らにとっても私は異星人です。
普通なら、貴重な資料として扱われるのではないでしょうか。ええ、貴重な実験動物として。
ルーランは、そこから私を助けてくれたのです。
たぶん……というか絶対に気まぐれからでしょうが、助けてくれたのです。
人非人=人であって人でない者。(大辞林)
うん、タイトル嘘ついてないですねw
現在のルーランの認識=飽きたら捨てればいい暇つぶし。
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