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あかね雲

□ 黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集 □

※風邪を引きました 2


風邪を引いたジョカの全快後の後日談です。
ほぼ全篇がっつりエロです。




 リオンとジョカ、どちらが素の腕力が強いかというと、意外にもリオンの方であったりする。

 ジョカは地上に並ぶものなき魔術師であり、地上最強の存在であるが、魔法なしの腕力なら騎士となるべく幼い頃からの修練をいまだに欠かさないリオンの敵ではない。

 黄金の髪が眩しい青玉の瞳の美少年は、ジョカより力が強い。
 つまり、何を言いたいのかと言えば。
 ――ジョカは押し倒されていた。

「……はい?」
 ジョカは目を丸くしている。
 その間にも、リオンはてきぱきとジョカの服を剥いでいく。この辺の手際の良さは師匠譲りだ。そして師匠とはジョカのことなので巡り巡った因果であると諦めてもらうしかない。

「あ、えーと……する、んたよな?」
「それ以外に、どう見える?」
 にっこりと、至近距離で金の髪の美少年が微笑む。
 それは笑顔でありながら凄味を感じさせるもので……。

 ――思わず沈黙した間も、リオンはさっさと作業を進めていく。ジョカは我に返って叫んだ。
「き、きたないから! 風呂!」
「うん。――後でな」
「先がいいっ!」
 ジョカは清潔感を重視し、衛生観念が発達している。この世界ではかなり異常なぐらいに。

「俺は寝込んでて体べたべたなんだって!」
「知っているが?」
「するのはいいけど、風呂に入ってすっきりしてから!」
「なあジョカ」
 リオンは気品漂う顔でにっこりと言ってのけた。
「これから白いもので体中べとべとになるんだから後でいいじゃないか」

「……その顔でそういうこと言うな――っ!」

 顔こそお人形のように美しいが、リオンはまぎれもなく男だった。
 そして、十代の性欲旺盛な「御年頃」でもある。
「あなたは、どうも、私に夢を見過ぎているきらいがあるな」
 犀利な美貌の、冷たいほどに整った容姿だが、別にリオンは枯れているわけではない。寝ても覚めても色気を考えるこの時期相応の色欲はちゃんと持っていた。

 毎日毎日肌を重ねていた相手が病に伏して、その間は我慢した。
 ――でも、もう我慢する必要はない。

 綺麗好きなジョカとしては、二日間寝込んでいた体で風呂にも入らずというのは抵抗がある。
「汚いし、匂いだってするし!」
「言うほど汚くもないな」
「――風呂に入ったら付き合うから! 俺だってしたいから! だからちょっと待……」

「なあ、ジョカ」
 リオンはたずねる。
「風呂に入ったら私をベッドに連れ込む気だったんだろう?」
「そうだけど……」
 そこで隠さず素直に頷くのがジョカである。

「なら、ちょっと早くなっただけじゃないか」
 そうかも、と一瞬動きが止まった隙に、最後の一枚を剥ぎ取られた。
「ちょ――」
 リオンはそれはいい顔で笑うと、のたまった。
「たまってるんだ。やらせろ」

 ――そして、ジョカは押し切られた。



「――リオンって、本質サドだよな……」
「サド? 相変わらず意味のわからない言葉を使われても困るんだがな?」
「判らないで良い。解説する気も起きない」

 リオンはジョカを組み敷いていた。
 肌を吸い、その汗の匂いのする肌を舐め上げ、胸をいじって声をあげさせながら、どうやってジョカをその気にさせようかと考えていた。
 最初に体を繋げたときから、リオンは受け身側だった。
 だから抱かれることに抵抗はない。
 でも、普通の男は受け身を嫌がるだろうということは想像できる。

 リオンは抱かれる快楽を知っている。身のうち深くまでジョカの熱を受け入れ、快楽を直接煽られるあの狂おしい歓びを。
 だが、今リオンを襲っているのは雄としての欲望だった。

 ――無防備に、力なく横たわる魔術師を見ていて芽生えた「もの」。口にすることすらはばかられるそれ。
 この力なき魔術師を蹂躙したい。常日頃なら、優れすぎて強すぎて比べることもできない魔術師を虐げ、ひれ伏させたい、という――嗜虐の欲望。

 幽閉中、泣いてすがる魔術師の姿に興をそそられる者もいたと聞いた。彼らは解放の空手形を盾に、ジョカをさんざんに責めさいなみ、ねぶった。
 ――最終的に、すべては反故にされたが。

 困ったことに、今のリオンにはそいつらの気持ちが、抱いたであろう劣情が理解できてしまう。
 絶大な力を持つ魔術師が、すべてをかなぐり捨てて這いつくばり、乞うたなら――……つけこみたくなる。
 容姿さえも二の次。
 意味があるのは、彼が、魔術師であるということだけだ。

 強大な力を持つ存在を征服したい。……そういう感情だ。男なら、大あれ小あれ持っているもの。

 ジョカは、そんなリオンを見上げて息を吐いた。
「お前は男だよなあ……」
「……? 何を言っている?」
「俺に抱かれるのが嫌か?」
「いいや?」
 ただ、今、彼を抱きたいだけだ。

 でもいつもの役割とは違うから、どう切り出せばいいかと悩みつつもその身体に顔を埋め、舐めしゃぶっていた。
 ジョカがさんざん気にしていた汗も汚れも気にはならない。
 息を吸い込むたびに鼻につく汗臭い匂いは、むしろ欲望を煽る。

 他人の匂いならばともかく、愛しい相手のものならば気にならない。
 人は、都合よくできている。

 ジョカは手を伸ばすと、リオンの首に巻き付けて引き寄せ唇を塞いだ。
 ねっとりと、口内を粘膜がねぶる。熱い舌が歯列をたどり、舌と舌が絡み合い、擦って唾液を溢れさす。
 口の端から透明な流れが伝った。
 濃厚な口づけを五分ほども続けて、ジョカはやっと唇を離した。

「ごめんな?」

 その意味がわかったのは、あっさりと体の上下を入れ替えられた後だった。
 劣情が灯った黒い瞳が、至近距離にあった。
「リオンの中に入りたい。リオンを抱きたい。狭くて熱くて気持ちのいい中で、溢れるほど精を注ぎたい」
 俺も飢えてるんだ、とジョカは呟き、顔を埋めてリオンの白い肢体を貪る。性急に後ろをほぐしにかかった。



「……看病、したじゃないか……っ、あっ」
「うん、ごめん」
 口先だけで謝りながら、ジョカが突き上げる。
 リオンの後ろはもう目一杯まで開かされ、奥深くまでジョカの性器を挿入されていた。
「や……あぅ……ふ、深い、ああんっ!」
 対面座位で交わっているので、いつもよりずっと深くまで届いている気がする。

 すでに一度達しているせいで、突き上げられるたびに粘性のいやらしい水音がする。それでもジョカの熱は収まる気配がなく、目下そのまま二回目になだれ込み中だ。
 硬いもので中のいいところを擦られてリオンももう放っていた。
 腹を汚す精液をジョカが指先ですくいあげ、ぺろりと舐める。
「お前のでなけりゃ、男の精液なんて触るのもごめんなんだけどな? 白いもので体中べとべとになるんだから、か。――自分の言葉の責任はとろうな?」

 抽送が激しくなる。
「あ……ああ、んっ、ジョカあっ……!」
「うわ……おまえ、凄いヤラしい顔……」
 内部の性器が一層大きくなるのがわかる。
 ジョカが中のいいところを擦れば、内壁がきゅっと締まった。性器を締め上げられる心地良さにジョカが吐息を吐き出す。

 ちゅ、とジョカがリオンの眉に口づける。
「リオン……リオン。可愛い。すげー可愛い。好き。愛してる……」
「あ……あんっ、ジョカ……ジョカ……っ」
 ジョカの背に回した手に力がこもる。

 熱に狂ったお互いの顔はとても近くて、お互いへの欲情を、鏡のように見せつけられた。

「あなたが好き……好き……だ……っ!」
「――リオン……っ。くっ!」
 体の奥でジョカの熱が弾ける。奥に熱い精を浴びせられて、それがいってしまうほど気持ち良かった。


 「好き」と、「愛している」とを交換しながら、何回交わっただろうか。

 リオンは自分で吐いた言葉の責任を取らされて、体中白濁した液で汚された。顔にかけられた時にはさすがに青い目で睨んだが、それがジョカの欲望を煽ったようだった。
 結果――しずまりかけていたジョカの熱が再燃した。

「うあ……最高…っ」
「ちょ…? …っやっ」
 押し倒されて、背後から再び男根をねじ込まれた。
「あ……ああっ!」
 さんざん精を出されたばかりの蕾はその乱暴を難なく受け入れてぐじゅりと音を立てる。間をおかず突き上げられた。

「リオン……リオン……っ!」
 ジョカは複雑に蠢き性器を絞り上げる内襞に夢中になって突き上げる。
 もう頭の中はこの愛しい少年を貪ることしかない。理性の箍ははじけとんでいた。
「あっ、あっ、ああっ!」
 がつがつと腰を打ちつけられ太くて熱いものでごりごりと内壁をこすり上げられる。頭の中は真っ白だった。
「ジョカ……あ、ああ……っ!」
 リオンはシーツを握りしめ、激しい動きにただ声を上げた。

 岩壁には淫らに絡み合う二つの影が映っている。
 寝台に四つん這いになって後ろから貫かれる影と、激しく腰を打ちつけるもう一つの影。

「あ……ああ……っ! んあっ、あっ、ああ~~っ!」
 後ろの影が突くたびに貫かれる少年は声を上げる。死人でも春情を催しそうな艶やかな声だ。
 ましてやそれを直に聞く男にとっては言うまでなかった。
 熱が――猛る。
「んあ……いい……締まる……っ」
 荒い息遣いと喘ぎ声、肉をえぐるたびに立つ水音が反響し、狭い部屋には独特の匂いが充満していた。

「リオン……リオン……くっ!」
 後ろの影が腰を掴み、深く重なり合ったあと体を離す。シーツにぽたりぽたりと垂れるのは、内部に吐き出された精だ。
 つつましい蕾は抜かれてもすぐに閉じることはなく、こぼれた白い精が幾筋も太腿を伝っていた。




 激しい情事のあと、二人は風呂に沈んでいた。
 さっきからずっと睨んでいるリオンに、ジョカは早々に白旗をあげる。
「あー……やりすぎた。ごめん」

「……いつかやり返ししてやる」
「ごめん。でもつい。あんまり色っぽくて。ああいうの、男の夢だよな~」
「人の顔にかけるのがかっ」
「かけられて本気で嫌そうに眉ひそめた表情とか、指先で拭う仕草とか、精液ついたまま睨んでくる目とか……あ、思い出したらまたしたくなってきた」
 リオンはぎょっとして距離をとったが、狭い湯船の中だ。限界がある。

「さすがにもうしないって。俺の方も打ち止め」
「同じことを今度してやる……」
 恨み事を言うと、ジョカは飄々と笑った。
「いーよー」
 本気で怒れないのは同罪だからだ。

 足を開き、体の奥の奥までジョカを受け入れるのはとても気持ちが良くて……ジョカに貫かれて上げる声は、自分でも耳を塞ぎたくなるほど乱れている。
「――」
 なんだかんだ言っても。
 ジョカはリオンに甘いし優しい。一方的に負担をかけるような性交はしないし、気持ちがいい。
 だから、許してしまうのだ。

 ジョカはリオンの空気が丸くなった事を感じ取ると、濡れて色を濃くした金髪をかきわけてその唇に自分のそれを重ねた。
「リオン、愛している……」
 その言葉にどうしようもなく嬉しくなってしまうのは惚れた弱みなんだろうと思いつつ。
 リオンは自分からも、唇を重ねた。




ジョカはリオンに抱かれるのが嫌ってわけではないのです。
「今は」余裕がないから抱かれるより抱きたいってだけなのです。
攻め側で慣れてないリオンだと体を繋げるまでに時間かかっちゃうので、待ってられないって感じです。

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Date:2015/10/31
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