目が覚めた時、ルーランに謝られました。
……怖いです。天変地異が起こりそうです。おっかないです。
何故か謝る側より謝られる側の方が体を縮めているという構図のなか、話が始まります。
顔をひきつらせながら話を聞いたところによると、
・レイオス人と、地球人では、身体能力に圧倒的な差がある。
・デコピンで額に裂傷、脳震盪だった。一歩間違えれば頭蓋骨亀裂でお陀仏だった。
とのことで……、ルーランは「知識として」それは知っていましたが、だからデコピンにしたのですが、それでもうっかり私を殺しかけてしまった……というところらしいです。
はあ……いえ、いいんですよ?
まさかデコピンにさえ耐えられないとは思わなかったっていう、ルーランの気持ちもわかります。あ、これはルーランが言ったわけじゃないですよ。表情から読みました。
身体能力が違うから配慮してデコピンにしたのに、まさかそれでも死にかけるなんて思わなかった、っていうのは、まあわかります。
私だって立場が逆ならそう思いますよ。
まさかデコピン一発で……っていう、ねえ?
身体能力がちがうってそういえば同じニュアンスの言葉を聞いた気がします。
どこでしたっけ……ああ、そうだ、絶対人を殺すな、と言われたときです。お前のような貧弱な人間に、とか色々言われました。
あの時は魔力がないから、と思っていましたが、そういうことだったんですね。
それにしてもデコピン一発にも耐えられないなんて……。
ううう、この星の人と喧嘩する気は最初からないからいいといえばいいんですけどっ。
なにか、悲しくなりますね……。
ちなみに、
「……それじゃあ私がこの星の人を傷つけることなんて不可能では?」
と聞いたところ、
「肌が鋼鉄で出来てるわけじゃないんだぞ。ナイフを持って刺せば普通に刺さる。そして、油断していればお前でも刺せる。刺さりどころが悪ければ、死ぬ。殺すのはじゅうぶん可能だ。幸運と度胸に恵まれれば、だがな」
という答えが返ってきました。
そうですね……地球でも男性が女性に刺されて死ぬ事件なんていくらでも起きてますから。いくら身体能力に違いがあっても、武器と隙をつけば殺せるってことですね。
デコピンで死にかけてしまった私ですが、冷静になると、はい。
結構……別の感情がわいてきました。といっても、怒りじゃありません。
「……悪かったな。もう二度とこんなことはしないから」
本当に反省しているルーランの顔が、とても嬉しかったのです。口に出しては言えませんけどね。
まだ同居始めて一か月とすこしですが、中々いい関係を築いていけてると思うのですよ。
僅かに芽生えかけていた恋の萌芽は完膚無きまでに叩きつぶされましたので、もうありません。
今私にあるのは彼への親愛。友情の芽です。
やっぱ、ね。
長ければこの先五十年、私が死ぬまで一緒に生きていく人です。いがみあうより、仲良く出来た方がずっといいですよね。
えーと、ルーランの視点でいうなら、日光猿軍団でしょうか。
種が違うから恋愛対象ではないけど、仲良くはなれますよね、そう日光猿軍団みたいに!
「仲良く、一緒に、幸せに生きていけたらいいなあ……」
おや。
思ったことが口からこぼれ落ちてしまいました。
ルーランは、目を丸くしていましたが、頷きました。頷いて、くれましたよ。
ルーランの操り人形はキツかったですが、今はとん挫して、よりよくするための研究に熱心です。
……たぶんその研究が実現したら、実験台にまたなるんだろうなあと思いますけど。
ま、それぐらいは諦めましょうか。
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