<あらすじ>「俺の妻になれ」「はい」
魔王にいどみ、負けた勇者(女)。
魔王に負けた少女は仲間の命と引換えに妻になることを承諾する。
※一部残酷表現があるのでご注意ください。
<登場人物紹介>読まなくても大丈夫! 本文読めば自然と頭に入ります。
多少のおちゃらけと裏設定があるので、本文読んだ後に読むとなお面白!
《クリス・エンブレード》
主人公。
十八歳の人族の少女。
長い黒髪、青い瞳。美人ではないが、容姿はそこそこ可愛い内に入る。
しかし剣を持てば鉄を叩き切るわ(剣の性能大きいけど)、殴れば大抵相手は漫画のように吹っ飛ぶわ、人族のくせに魔法抵抗大きいわ(鎧の性能がめちゃ高のせいだけど)、と剣士としては大陸でも十指に入る人物で、実はけっこう有名人。
纏っている装備品は超がつく高級品で、単品でも家が一軒建つ。フルセットでは一生遊んで暮らせる。しかしこのクラスの冒険者としてはそれが当たり前なので、本人は特に特別だとは思っていない。
性格は始末に悪いレベルのお人好し。
ただし無闇に善良でも世間知らずでもなく、「人が人を助ける」ということの重みと意味をよく理解しているお人好し。
人助けが趣味で、それで助けた相手から逆恨みされることもしばしばなのだが、それでもやめない。
現在5人でパーティを組み、そのリーダーをやっているが、メンバーは既にリーダーの性分にアキラメの境地。
《魔王》
魔族の王さま。
ゼトランド地方一帯を統べていて、ある日主人公の挑戦を受け、それを退けた。
久しぶりに全力で数時間もバトルして少女一行にほのかな好意を抱いたため、暇つぶしにはちょうどいいかと、仲間の赦免と引き換えに少女の身柄を要求する。
魔王協会統一法第一条が「誰でも魔王をぶっころしていいよ♪ できるもんならね」のため、挑戦を受けることはけっこうひんぱん。
それでぶち殺されても「弱かった方が悪い」で通るのが魔族の社会なため、実はけっこうハードな日々を送っている。
魔王というのもラクではない稼業である。
《コリュウ》
母竜が死にかけのところ、胎内にいたコリュウを少女が助け出し、育てるようになった。
名前はネーミングセンスのない少女が「小さい竜」とそのまんまでつけた。
しかし本人は生まれたときから呼ばれているので結構気に入っている。問題は大きくなった後のことだが……あまり考えたくないので考えていない。なぜなら、人族と竜族の寿命は違いすぎるので、その頃には少女はとうに死んでしまっているからである。
鱗の体色はエメラルドグリーン。鱗一枚は子どもの爪ぐらいの大きさ。胴体の大きさは小型犬ていど、翼を広げた横幅は大の大人が両手を広げた1.5倍。首が長く、ほっそりとした尾も長いので、頭から尾の先までは、大柄な男の身長ほどはある。
種族は飛竜。
正式な種族名などは生まれた時に実の母が死んでいたので、詳しいことは全く知らない。
寝る時は尻尾を蛇のようにとぐろに巻き、頭をその上にちょこんと……ではなく。横に眠る少女のほっぺたの上に顎をおく(少女がいないときはとぐろの上に置くが)。おかげで起きたとき、餅のようにふっくらした少女のほっぺたには、鱗の跡がくっきりとできているのが恒例。
そしてそれに少女が文句を言うのも、このパーティの朝の風物詩である。
一にクリス、二にクリス、三がなくて、四にごはん。
とにかくお母さん(クリス)がだいすき! な、マザコン一直線のコリュウである。
実は、少女に付き添って実戦経験を積みまくった結果、コリュウは生後十年以内の飛竜の幼生の中ではだんとつトップの能力を持つ。
まあ、他の飛竜の幼生は、まだ竜族の縄張りの中、お母さんドラゴンの胸の中で、なでなでされているのが仕事だからねえ……。
《マーラ》
とあるところにどんぶらこっこと海を流れてやってきた奴隷船の一団がおりまして。
ある日超絶おせっかい&身の程知らずの少女に出会ったのが運のつき。
後難だのしがらみだので誰もが二の足をふむとんでもない暴挙を少女はいたしてしまいました。はい、さっくりと奴隷商人と護衛をやっつけて、奴隷たちを解放してしまったのでございます。
そこで困ってしまったのが奴隷だったエルフたち。なんせ生まれ故郷からは遥か遠く離れた異国の地。そこにいる種族もちがいます。さてこの大陸に住む同胞たちに連絡を取りたいと思っても、場所も判らず、一朝一夕でなることではありません。まず必要なのは当座の住まいと食料でございました。
そこで手を差し伸べたのがかのおせっかい極まりないくだんの少女です。
その当時少女が本拠地にしていたサンローランの村は、田舎も田舎ですのでいっぱい土地がありました。村の恩人であった少女は、その恩を盾に取り、卑怯にも村長らを脅迫して、そうした土地と当座の食べ物を用意させたのでした。
さて、エルフです。魔法の最優秀種族でかつみんな美人ばっかりと評判のエルフです。
そうしたエルフが村はずれの土地に住むことになりますと、やっぱりみんな美人は大好きです。女性は醜男より美男のほうが好きですし、男だって美女と醜女なら美女の方が好きに決まっています。醜い人間にはつらい世の中ですね、よよよ。
田舎も田舎、どん詰まり村であったサンローランの村は、それだけにおかしな偏見とは無縁の場所でございました。
子どもなどは村はずれまで遊びに来て、エルフが当たり前に使う魔法に瞳をキラキラさせて見入ります。大人もやっぱり目をきらきらさせて見入ります。
かくしてエルフ一行はあっさりと村に溶け込みました。
腰を落ち着け、しばらく経った頃、彼らは恩人であるひとりの少女に、願われます。
誰かひとり、私のパーティに入ってくれない?
エルフたちは相談し、代表してひとりを送り込みました。それがマーラなのでした。最初は、かったるーと思っていた彼ですが、そうして一年がたち、二年が経ちますと、はて。
いつの間にかすっかり少女に傾倒していたのでした。
彼の優先基準は一に少女、二に同胞、三四がなくて、五にサンローランの町(村から町になりました)の人々、でしょうか。
《ダルク》
半魔族。
魔族の父親のことは本人知りませんが、実は貴族です。魔族の貴族と人族の召使いの間によくある事がおきて生まれました。身体の特徴はほぼ魔族。青黒い肌に、黒髪、黒い瞳です。
ところで青黒い肌って、隠すの大変なんですよねー。つかぶっちゃけ無理?
全身すっぽり覆ったところで、目のところは出さなきゃいけないですし、目の周りの皮膚の色だけでもう無理無理。
というわけで、人族の国で暮らす半魔族の子どもには言うも涙、語るも涙の数々の試練が待ち構えておりました。その結果、成長して青年になる頃には、すっかり根性がひねこびまくっておりまして。ついでに、馬鹿にされない力をつけようと魔法を必死に鍛えたために鼻っ柱もにょきにょきしておりました。
その鼻っ柱をぽっきんぺきぺきとへし折ったのが、主人公の少女でございました。
腕っ節はこれはもう剣士一筋の少女とは雲泥の差がございます。
魔法能力は、魔法の最優秀種族であるエルフとは、これまた高低差1000メートル級の滝の天辺と滝つぼほどの差があります。
というわけで悪事をなしていたひねくれ半魔族は少女のパーティに軽くひねられ、紆余曲折を経て少女のパーティに入ることになったのですが、はいここで問題が。
……エルフはサドだったのです!
ドSです。少女へはとっても甘くて、他人にも人当たりはいいくせにまごうことなきSです!
パーティで、戦力的に、最も劣っているのは衆目の一致するところ、ダルクです。そして、ひとりが足を引っ張ればみんなが危険になるのがパーティです。
ただでさえ疲れている仕事の後、スパルタははじまります。
てめえがひとりで危険になるのは勝手だが、大事な大事なクリスを巻き添えにするこたぁ許さん。
にっこり無言でそう言うエルフから、びしばしと、容赦のないシゴキが飛びます。
バカ! ボケ! 能なし! 無能! どうしてこんなのもできんのだ! 役立たず! 死ね!
しくしくしく……。
魔法の最優秀種族であるエルフの基準で鍛えられても……というもっともな抗議は胸の内に飲み込み、一生懸命ダルクはパーティメンバーに追いつこうと努力を重ねるのでした。
ちなみに優先基準は
一に母親と少女、三四がなくて、五にサンローランの町人たち、でしょうか。あ。エルフは十番目ぐらいで。
パーティメンバー全員、いざとなれば仲間を見捨てて少女をとる、そう思っている辺り、似た者同士のグループと言えるでしょう。
《パル》
小人族。
身長およそ大人の掌ぐらい。胴まわりは人差し指と親指で作った輪ぐらい。
隠蔽魔法と脱出魔法にかけては右に出る者はないという小人族で、このパーティ内の斥候および
盗賊技能担当。宝箱の罠だのダンジョンのトラップだのをちょちょいのちょいで外す、器用な指の持ち主です。
ダンジョンに潜る際などは彼の事前の斥候が非常に重要。彼の情報がなければ「一か八か」になってしまうので少女たちは大変感謝しておりまして、戦闘能力はないものの大事な仲間として誰もが認めるところ。
ただ時々先走ってしまうのが困りもの。
魔王城に主人公一行が潜入するとき、斥候して侵入経路を選定したのは彼なのですが、少女たちが侵入後、先行して魔王の様子を見に行って、なんと魔王がぐーすか寝ているのを発見。
ここで殺せればクリスは成功率1%の賭けなんかに出る必要ない、千載一遇のチ~ャンス!
……と襲いかかったところを運悪く寝返りを打った魔王につかまりました。
隠蔽魔法は一回行動すると解けるので、忍び寄るところまでは姿を隠していましたが、襲いかかったときには姿は見えていて、あっさりお縄。
そんな彼ですが、天敵がいます。そう、路地裏の犬です。
鋭い嗅覚の犬猫には隠蔽魔法も効果なく、太った鼠と大差ない大きさの彼はあやうくぱっくり食べられかけたところをクリスに助けられました。
小人族は小さいうえに隠蔽魔法の第一人者なので、人族に見つかることは極めてまれ。
小人族の中では人族=悪魔と同一視されていたのでびくびくもんでしたが、クリスに助けられ、ついでにクリスに頼まれたマーラに傷を癒され(その際パルは、マーラに他の人族とクリスを一緒にするなと怒られた。人族に対する偏見だらけの小人は、もっと偏見の強いはずのエルフの言葉に目を白黒)、更には何の見返りもなくあっさり解放されて興味が湧き、パーティに同行することに。
クリスいわく、「……伝説の種族がまさか近所の路地裏で食べられかけてるなんて思わないわよ……」とのことである。
→ NEXT
- 関連記事
-
スポンサーサイト
Information
Comment:7