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あかね雲

□ 黄金の王子と闇の悪魔 番外編短編集 □

※いつものよくある日常の光景


最初から最後までエロのみです。
ついかっとなってやりました。後悔はしてません。




 やはりどこかで孤独を怖がっているのかもしれない。
 ジョカはリオンの体温を感じながら眠るのが好きだ。
 側に人肌があると落ち着くし、それがリオンであればもっと安らぐ。
 もっとも、別の意味で落ち着かない気分にもなってしまうけれど。

 そんなわけで、ジョカが目覚めた時は隣にリオンのぬくもりを感じることが多い。寝台を別にするのは派手に喧嘩したときぐらいだ。
 だからその日も、ジョカは隣にリオンの体温を感じながら目覚めた。

 隣に目をやると、金色の髪と肌色が目に入る。
 リオンは一糸まとわぬ姿で穏やかな寝息を立てていた。
 ――そう言えば、と思い出した。

 昨日は風呂に入った後に素裸で絹のシーツに潜り込み、いつもと違う素肌に直接布地が触れる感触を楽しみつつ眠りについたのだった。

 寝ている最中に毛布を蹴り飛ばしたのか、左足の先にだけ毛布を引っ掛けた姿で、リオンは体の左側を下にして眠っていた。
 ジョカにとって世界一の美少年の寝姿は、それだけで目の保養だ。

 伏せられた睫毛の長さやあらわになった首すじの蠱惑を観賞しながらそっと手を伸ばし、細い金糸の髪を撫でる。細い金髪は柔らかく、撫でても目覚める様子はない。その手触りを楽しみながら下に目をやる。

 半身を下にし、丸くなって眠っているので、滑らかな背中にはくっきりと背骨が浮かび上がっている。その一つ一つの関節を目で愛でながら視線を下げていくと、背筋の終着点に行き着いた。

 急に喉が渇いた。
 口腔から唾液が姿を消し、口の粘膜が渇きを訴える。
 紅色に色づいたその窄まりから目が離せない。

 ここが皺が見えなくなるほど広がってジョカを咥えこんだのだ。
 一度だけでなく何度も何度も、数えきれないほど……。
 その時の熱さ。吸い付くような内部の襞の締め付け。
 まるで今まさにそれを味わっているように、ありありと思い出してしまう。

 蘇った記憶の鮮烈さに息を詰め、ジョカは凝視していた。
 股間に熱が集まってきているのがわかる。
 いっそこのまま犯してしまおうか、いやそれはいくらなんでも、と葛藤していると、声がかかった。

「挿れたいか?」

 ぎょっとして顔を上げると、リオンが見ていた。
 寝台に肘をついて上半身を緩くもたげ、悪魔的な微笑でジョカを見ている。
 ジョカは驚いたものの、それはすぐに苦笑にとってかわった。
 晒された蕾を前に、ご馳走を目の前にした犬のような顔で注視しているのだ。
 誰であってもジョカの考えていることは丸わかりというものだろう。

 ジョカは素直にうなずいた。
「挿れたい」
「じゃあ、しゃぶってくれ」

 リオンは足を開き、金褐色の茂みをさらす。
 ジョカは足の間にいざって、茂みの奥で頭をもたげ始めている性器を見下ろした。

「見られて興奮した?」
「あんな目で見られたら、誰だってこうなるさ」
 ジョカは体をかがめてリオンの男性を両手ですくいあげる。
「あのまま犯されるかと思った……ン」

 ジョカは口中に愛しい人の性器を導いた。
 芯を持ち、大きくなった男性器はすべてを口に入れるにはあまりにも大きい。
 先端を口に含み、その滑らかな皮膚を舌でしゃぶる。
「あ、ん……っ、ん、…」

 粘膜は少しの刺激が痛みとなる。痛まぬよう唾液を乗せた舌で、敏感な先端のすみずみまで愛撫する。くぼみを念入りに往復し、小さな穴を舌の先端でこじる。

 ジョカはリオンを口で愛するのが好きだ。
 自分の愛撫に直接的に反応して大きくなるので、やっていて楽しいしやりがいもある。すべすべした粘膜の感触も触っていて気持ちいい。

「は…ん……、いい……」
 口中の大きさも固さももう限界だ。
 滲む液と唾液が混ざり合い、口の端から零れ落ちる。
 このまま最後までいかせてしまおう、と唇それ自体を愛撫する道具として深く男性器をくわえこむ。そのまま頭を前後させて、口唇で性器をなぞりあげた。

「あ……ジョカ、で……る!」
 ――出してしまえ。
 無言の意思は雄弁に伝わって、弾けた。

 リオンはジョカのものであっても嫌な顔をするが、ジョカの方はリオンのものなら精を飲むことに嫌悪はない。
 最後の一滴まで搾り取って、こくりと飲み下した。
 まずいだろうか、これ。
 以前下らないことだが真面目に『精液はまずい』とリオンが主張したことがある。だが、人間の五感というのは主観によって変わる。

 リオンはまずいだろう! とかなり真剣に言っていたが――困ったことに、ジョカの味覚ではまずくないのだ。
 リオンの物なら涙や唾液はもちろん、汗だろうが鼻水だろうが甘く感じる変態もとい特異体質のジョカとしては、リオンが感じてくれている紛れもない証拠である精は、『まずくても我慢する』ものではなく、進んで飲みたいものだったりする。言うとリオンが引くので言わないけれど。

 舌についた金茶の陰毛を指で取っていると声がかかった。
「しようか?」
 白い肌をうっすら血の色に染めた扇情的な姿で、リオンが問いかける。
 されるがままの性行為をジョカは好まない。
 なので、男同士の性行為について何も知らなかったまっさらなリオンに、互恵精神を教え込んだ。

 性行為はお互いが気持ちよくなるもの。
 受け身で「だけ」いるのはやめましょう。
 してもらったら相手にも返しましょう。

 リオンは物覚えがいい上にすなおなので、ジョカに教わったことをそのまま覚えた。監禁状態で上下関係があったこともあるが。
 おかげで、ただ愛撫を受けるだけではなく、こうして返そうとしてくれる。

「ん、いい。挿れたいし」
 魅惑的なカーブを描く尻を撫で、その先にある窄まりに指を入れる。
「んっ」
 ジョカの股間はとっくに準備は整っている。
「がまんできない。力抜いて……?」
 いつも使っている脂ではなく、思いついて香油を取り寄せてみる。
 それを指に絡めて差し入れた。

 体温で温められた花の香りが強く匂う。
 目を伏せてされるがままにいたリオンが薄く眼を開け、ジョカにたずねる。
「何……?」
「ちょっと強いな、紫花の香油なんだけど……」
 指を二本入れて、内部で開く。抜き差しする音とともに、花の香りが周囲を満たした。

 リオンのくっきりした眉がひそめられる。
「ジョカ……ちょっと」
「好きじゃないか?」
「香り自体はいいんだが、頭が痛くなりそうだ」
「了解。やめとく」

 ジョカは香油を消したが、リオンの内部に残った分はジョカが指を抜きだすたびに香った。
「中まで綺麗にした方がいいか……?」
「いや……いい。あなたの匂いで上書きしてくれればいいから」

 手を広げられて招かれる。もちろん否やはない。
 ジョカはがちがちのものに無香料の油を塗って滑りを良くすると、リオンの後孔にあてがった。
 が、油まみれの性器はつるりと滑ってしまう。
「へたくそ」
 リオンはくすくす笑う。
「滑るんだよ……」

 ジョカは蕾に二本の指を入れて中で開いた。
 広がった蕾に性器をあてがって指を抜くと、くちゅりと先端が中に含まれる。
 先が入れば後は容易い。油の助けを借りて、ずぶずぶと埋まっていった。
「んあ……ん……っ」

 正常位で犯しているので、表情全て隠しようがない。
 リオンはしかめた顔を背け、シーツを強く握りしめてその感触に耐えている。
 男の欲望を受けいれるのだ、そういう風にできていない身体で。
 つらくないはずもない。
 きつくしかめられた眉が何よりそれを雄弁に語っている。

 リオンの肩を寝台に押し付けて、腰を押し込む。狭くてきついので貫くのにも力がいる。
「あ……や……ああ…っ」
 奥の奥まで犯して、ジョカは動きを止めた。

 性器の粘膜すべてが肉襞に包まれているのがわかる。
 リオンの肉だ。今愛しくてたまらない人間と繋がって包まれていると思うと、それだけで暴発しそうになる。

 ジョカはリオンの腰を両手で支えて、腰を引いた。
「ん……ジョカぁ……っ」
 ずるりと、リオンの後ろから先ほど押し込んだばかりの赤黒い肉棒が引き出されてくる。
 今度は押し込む。
 入っていく。じゅくじゅくと微かな音を立てながら、ジョカの性器がリオンの中に沈んでいく。
 ジョカはその様を陶然として見つめた。
「ジョカ、あっ……!」

 理性の箍が外れた。
 リオンの足を胸につくほど折りたたみ、無我夢中でその白い肢体を貪った。
 はっはっという獣の息遣いがする。
 それが自分の呼吸だと気づくまで、しばらくかかった。
 欲望のままにリオンを攻めたてめちゃくちゃに突いて内部に精をはじけさせてやっと理性が舞い戻ってきた。

 内襞が性器を押し包み、内部がキュッと絞り上げて男の精を最後の一滴まで吐き出させる。
「くっ!」
「あ……ああ……あっ」
 押さえつけていた足を解放すると、解放の余韻に体を震わせ、荒い息をつきながらリオンはジョカを見上げてねだった。
「抜いてくれ……」

 紅色に色づいた肌。潤んだ瞳。
 男に犯された直後の強烈な色気ただよう美しい顔で懇願されて、再び股間が固くなった。
 もちろんそれにリオンが気づかないはずがなく。
 体内で膨れ上がっていくものに、ぎょっとした顔で言う。

「姿勢がきついんだ、変えてくれ……っ」
「わかった」
 ジョカは素早く引き抜くと、リオンの体を引っくり返した。
 リオンが腰を上げる。犯すための、獣の体位だ。

 ジョカはリオンの尻肉を両手で揉んだ。
「あ、んっ、なにっ?」
 白人の肌はざらついているものだが、まだ若いリオンの肌は滑らかだ。それでも黄色人種や黒人の肌ほどではないけれど。
 もちろん、ジョカが揉みしだきたいと思う男の尻はリオンだけだが。
「ちょ……ジョカ!」
 抗議の声が上がったが、さっくりと無視する。

「やっ、んっ、あっ」
 満足するまで尻肉を揉んでもっちりした感触を楽しむ。
 それから目の高さにきた蕾に指を入れると、先ほど吐き出したばかりの精が音を立てた。
 そのまま指を出し入れすると白い液体が穴から零れ落ち、白い腿を伝い落ちていく。
 それを目で追って、ジョカはリオンの後ろの穴に完全に硬度を取り戻した一物をあてがう。感触にリオンが身構えるのを感じる。滑らないよう慎重に狙いを定める。
 挿入した。

 白い臀部に、醜悪な凶器が呑み込まれていくところは何度見ても絶景である。
「あ……んっ、う、あん……っ」
 穴を揺すると、先走りと精が混ざった汁が滴り落ちる。

 もう、数えきれないほど抱いた体だ。
 リオンのいいところなど誰より知っている。
 そこを突いてやると体は敏感に反応した。
「あ、あうっ、ジョカあ……っ」
「ここがいいんだよな、リオンは」
「ひゃうっ! あ、いや、やめて、やめない、で……ああっ!」

 リオンが弾けた。
 ジョカは前に手を回してリオンの精をぬぐい、ぺろりと舐める。
 後ろはまだジョカを呑みこんだままだ。こちらはまだ満足とはほど遠い。

「リオン、抜いたり入れたりするから、タイミングを合わせて俺を締め付けて」
「……うん…、ひゃっ!」
 後ろからリオンの顎をすくいあげて横を向かせ、口づける。

 その動きで中が締まる。
 ジョカは息を吐き出した。
「気持ちいい……」
 全身でリオンを感じ、繋がっている。
 それが途方もなく――いい。
 背に浮いた汗を舐めると、そのたびに中がびくびくと脈動した。

「リオン、いいか?」
「う……あ。いい……」
 じゅぶじゅぶと中をかき分けるように進むと、リオンに締め付けられる。
 性器を包む粘膜が蠢いて、締め付けるのだ。
 抜く時はその襞がしごくように粘膜にぴったりとまとわりつく。

 もっと欲しい。
 もっと味わいたい。
 どれほど抱いても物足りない。足りる気がしない。
 ぽたりぽたりと汗がしたたり落ち、シーツに染みを作る。

「リオン最高……っ」
 波をこらえきれず、ジョカは呼吸をとめ、腹筋に力を込めた。
 内部に精を吐き出し、びゅくびゅくと痙攣する。

「ジョカ……熱い……」
「がまんできなかった。もう少しだけ、入れさせてて……」
 吐き出しきってしばらくたっても、ジョカはそのままだった。
 それどこか腰を揺らし始め、不穏な動きにリオンもさすがに声を上げる。
「ジョカ……抜いてくれ……」
 それに対するジョカの返事は、
「悪い。勃った」
 という予想通りのものだった。

「嫌なら抜くけど、だめか?」
 リオンは深いため息をついた。
「…………もう一回だけ、だからな」



 風呂場でリオンはぐったりと体を浴槽の縁にかけていた。
「この、ドスケベ魔法使いが……っ!」
「ごめんなさいすみませんまたやりたいです」
 リオンはジョカに湯をかけた。
 当然の行動である。

 もうすでに時刻は昼を過ぎている。
 朝も早々からさんざっぱらアンアン言わせられた少年は黒髪の魔術師を睨む。
「今度ジョカに突っ込んでアンアン言わせてやろうか……」
「俺は構わないけど」

 普段通りの顔でそう言う魔術師をリオンは数秒眺め、手を伸ばしてジョカの後ろの窄まりに指を入れた。
 湯の中で、指は意外とすんなり入っていく。
 ジョカも嫌がる様子はない。

 ついさっきまで、リオンのここはジョカの性器を入れられていた。
 ジョカの物が内部をかき回し、幾度も幾度も中に精を吐き出した。
 盛りの付いた犬のように腰を振って、かれは自分のからだに夢中になっていたものだ。
 不本意ながらも自分も、快感の中枢を直に擦りあげられる感触に声を上げ、幾度も性器を震わせて射精した。

 いっそこのまま指でなく本物で犯してやろうかと思ったが――。
「……ちっ」

 さすがにあれだけしたら、リオンの方は打ち止めである。
 情欲は鎮火状態で、するのは無理だ。
 諦めて手を引くと、顎を持ち上げられて唇を塞がれた。

「んー」
 むちぅ、と角度を変えて何度もキスされる。
 湯の味がする。
 目を閉じて受けていると、体に固いものが当たった。
 ……これは、ひょっとしなくても……。

「もうしません、大丈夫」
 一瞬腰が引けたが、その言葉に逃げるのをやめた。
 ジョカは絶倫だが、リオンが嫌がっているのに行為を始めることはない。その辺は信頼していい。

 湯の中に手を入れて握ると、固くなっていた。
 あれだけしたのに。
「……あなたの性欲は底なしか?」
「ちょ、痛い痛いっ、もう少し力を弱めて。ええと、性欲は有限ですが、魔法使いですのでどうとでも――って痛い!」

 リオンはジョカをどやしつけた。
「いいか、あなたは無限の体力かもしれないが、私の体力は有限なんだぞ?」
「わかってる、してる最中バテたリオンを放って自分だけ回復なんてしないから!」

「じゃあ二人で回復すればいいんじゃないか?」
 ジョカは真顔で言った。
「それ、かなりまずい。ええと、腹上死って知ってるか? 体力に限界があれば、自然とセーブがかかるよな? もし魔法で回復させると、理性吹っ飛んだ状態で延々と交わりつづけることになる。
――そうすると十中八九死ぬ」
 リオンはぽかんとした。
「し、ぬ?」

「詳しい説明は避けるけど、男が射精するときには体に相応の負担がかかるの。それを休まず連続で続けると、まず間違いなく、死にます。だから射精するとどっと疲れるだろ? 疲れるようにすることで、体が自分を守ってるんだよ」
「……わかった……」

 笑い話が深刻な注意に変化したことにリオンは戸惑いつつも、内容が日常に密接に関わるだけに、素直に頷いた。

 腹上死は不名誉な死に方であるため、伏せられる事が多い。
 だからリオンの印象としては滅多にない死に方、というものだったが、実はそれなりに多かったのかもしれない。ジョカの口ぶりからすると、かなりの数がいそうだ。

「なあジョカ」
「なに?」
 リオンはにっこりと笑った。
「今度、あなたを抱きたいな」
「別にいいけど」

 ジョカはあっけなく了承した。
 ジョカとしては、どっちでもいいのだ。リオンが相手なら。

 そのこだわりのない態度に、勇み足を踏んだような気分になってしまったのはリオンの方である。
 ジョカを抱いたことがないわけではないが、その時もジョカはあまりにすぐに了承したもので拍子抜けした。
 どうやらほんとうに、彼はどっちでもいいらしい。

「お前が受け身じゃない方がいいって言うのなら、俺はずっと抱かれる側で構わないけど?」
 と、そんなことまで提案されてしまう。

 リオンは、男なのに抱かれているという事に直視できないもやもやを抱いていることを否定できないのだが、ジョカにそれは関係のないことなのだろう。
 以前も言われた。
 ――リオンが相手なら、どっちだっていい。

 それがジョカの姿勢であり、受け身かどうかは瑣末事なのだ。

 そうなると、男同士の性愛関係における役割にこだわっている自分が小さい人間に思えてしまって、リオンはこう返したのだった。
「……ちょっと考えさせてくれ……」

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Date:2015/11/22
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