時期的に同人誌完結後。
ふたりがひたすらいちゃついているお話です。
本格エロはないけど疑似性行為はあります。
男同士のセックスに、前戯と潤滑油と労りは不可欠です。
本来不自然な、からだに負担をかけるものだということを忘れてはいけません。
本格的な性行為(穴に性器を挿入する行為)まで行く場合、衛生面や傷の手当のことも考えましょう。
男性同士の性行為は受け身側の体の負担が大きいです。
性行為はしても、挿入までいかないで終わることが望ましいです。
――ジョカの脳裏にそんな無粋ともいえる知識が思い出されてしまったのは、愛する人の後孔を愛撫し、油を含ませ、柔らかくした後だった。
「…………」
男の性器というのは、最大限に固くなっても指のような固い芯があるわけではないので比較すると柔らかいものである。
そして後ろの口というのは本来出すべき場所で入れるべき場所ではないので、狭い。し、入れづらい。
リオンの場合、さんざっぱらジョカが犯しているので受け入れやすくなっているが、それはつまり括約筋が挫滅してきているということで……。
「ジョカ?」
いざ挿入、というところでジョカが止まってしまったため、リオンが訝しんで名を呼んだ。
「……えーと」
ジョカの股間は臨戦態勢である。
イタダキマスして食べるばかりの状態の薄紅色の蕾の中に、挿入したくて仕方ない。
リオンのそこは油を塗られてさんざん弄られたためにてらてら光を反射し、先ほどまで指を含んでいたのでうっすら開いている。
いつも通りに性器を突っ込んでアンアン言わせたいのだが、言わせたいのだけれど。
「……リオン。太ももに油塗るから、俺の挟んでくれる……?」
リオンが困惑しつつも頷いたので、リオンを立たせる。
壁に手を突かせ、油をリオンの股に塗って後ろから挟んでもらう。
油の滑りを利用して、腰を前後させるとリオンが首をねじって聞いてきた。
「ん……。こんなので、気持ちいい、か?」
ジョカの逸物はリオンの体温に挟まれ、ぬるぬるしていて温かく気持ちいい。
「うん、気持ちいい」
「どうして……」
リオンはそこで口籠る。
が、何を言いたいのかはよくわかる。
「いつまでもがっついてたらマズいよなあって思って」
「……は?」
「毎回毎回入れるところまでいってると、予想される後難が……」
――同性同士の性行為で後ろを多用していると、世にも恐ろしい後遺症が残ります。
ほどほどにしましょう。
「俺が終わったら、口でするから。ちょっとだけ先にさせて?」
「ん、わか――あっ!」
ぬるぬるになった太ももで挟んでもらい、疑似性行為をしていると、リオンの性器も近いわけで。
ジョカは後ろから手を回し、油を塗った手でつかんでしまう。
「あっ、ジョカ、ちょ、まっ」
本気で嫌がってなかったのでそのまま続行。ついでに腰を前後に動かすのも再開する。
見えなくても、手の感触だけで充分。リオンの性器は大きさも形もどこが特に感じるのかもよく知っている。
穴を指先でこじり、段々のところをぬるぬるしている指の腹で往復する。
「あ、あんっあっ」
ほどなくリオンが達し、ジョカはぐったりしたリオンの体を後ろから支えながら、腰の動きを早める。
最後はリオンの太ももから引き抜いて手をかぶせて終わった。
手を布で拭って、ジョカはリオンを仰向けに寝台に横たえると股間に覆いかぶさった。
「な、ジョカっ」
「はむぞ(かむぞ)?」
それを脅されると男は弱い。
リオンが大人しくなったのをいいことに、ジョカはぴちゃぴちゃとわざと音を立てて回りに飛び散ったリオンの精液を舐め取っていく。
「……ん……」
リオンが扇情的な吐息を吐き出す。
与えられる快楽に酔い、浸っているリオンの顔にジョカも満足だった。
同性同士の性行為なんて、子どもができるわけじゃなし、体に負担がかからず、お互いが満足できればそれでいいのだ。
ジョカはリオンの股間の周囲に飛び散った白い液を舐め取ると、立ち上がっていた陰茎をぱくりとくわえる。
そのまま口の中でもう一度射精させ、その分も綺麗にすると、ジョカはリオンの裸の胸の上に頬を置いた。
リオンの心臓の音が聞こえてくる。早い鼓動が、次第に鎮まっていく。
そのまま余韻に浸っていると、リオンが声をかけた。
「……ジョカ、いいのか?」
「なにが?」
「その……」
言いづらそうに言葉を迷っているリオンの様子に、すぐに察した。
「リオン、俺たちは男同士だ」
「ん? ああ。それが」
「男女とは違うんだ。いつも最後までしてたら、体がもたない。長く抱き合いたいのなら、ほどほどが一番だ」
それをコロッと忘れて欲望のままにやらかしていた過去を見事に棚上げにする言葉であった。
「体に負担をかけず、気持ちよくなろう! 具体的にはこれから口と手で処理する比率を上げよう」
「…………」
リオンは何かを言いかけてやめ、何かを言いかけてやめ、また言いかけてやめた。
そしてしまいには額に手をあて、ため息とともに言った。
「……じゃあ、ジョカ。ちょっとどいてくれ」
リオンが起き上がる動きに合わせ、ジョカは身を引く。
そしてリオンは無造作にジョカの股間をつかんだ。
リオンは悪戯っぽく目を光らせて言った。
「あなたは一回しかしてないだろう?」
「あ……手でいいんだけど」
「いいから」
と言われ、そのまま寝台の上で膝立ちになる。
リオンがジョカの性器を口に含むところがもろに見えて、思わず息をつめた。
リオンはジョカと違って口淫があまり好きでないと知っている。
どうもしゃぶるのはいいのだが、精液が好きではないらしい。
「いきそうになったら、抜くから」
リオンは頬張ったまま小さくうなずく。
そんな一つ一つの仕草さえ、可愛く見えてしまう。もうそんな年ではないのに。
愛しい、可愛い、大好きな相手が精一杯奉仕してくれているのだ。気持ち良くないはずがない。
「は……」
ジョカはやり過ごそうと息を吐き出す。
リオンが目を上げて、その色気にぞくりとした。
リオンの生温かい口腔のなかで、その舌がジョカの陰茎を舐めしゃぶっている。滲む汁を唾液とともにすすりこんで。
やばい、と思った瞬間腰を引いた。
自分の手を先端にかぶせ、手中に吐き出す。
「出してしまってもよかったのに」
「リオンは嫌いだろ?」
「最近慣れた。それに、始末が楽だし」
「……それは言えてる」
ジョカは部屋の隅に置いてある桶で汚れた手を洗う。
同様に、独特の異臭がする寝台の敷布や布巾を集めた。
精液の匂いはきつい上に強い。手洗いで匂いがしないよう洗うのは骨で、飲んでしまった方がいっそ楽なのだ。
リオンは首を傾げてたずねた。
「今の本気か?」
「本気だけど?」
「絶倫のあなたが満足できるのか?」
「……絶倫て。俺が受け入れ側でもいいんだけど、根本的な解決にはならないし」
後ろを酷使しすぎるとまずいことになるのはジョカも同じだ。
「これから後ろでするときは一回交代で、体に負担をかけずに行こう」
「後ろでしちゃなんでいけないんだ? そちらの方が気持ちいいのに」
「ええと……」
ジョカはリオンとするとき、痛みがないよう気をつけてほぐすので、リオンからすれば気持ちがいいのになんで、という気分だろう。
ジョカは真顔で最愛の恋人の肩に手を置く。
「――リオン。これから言う事は、一回しか言わない。だから心して聞いてくれ」
「……わかった」
ジョカは説明した。
括約筋が自然治癒することはないこと。
括約筋は男の性器を受け入れていたら少しずつ破壊されていくこと。
そして機能を失ったらどうなるかを。
リオンは聞きはじめの顔は酢を飲んだような顔であり、話が進むとゲロを食べさせられたような顔になり、最後の辺りではもうやめてほしいという心の声がだだもれの顔だった。
「――ってことだから、後ろでするのは回数控えよう」
「……異議なし」
力なく、リオンは同意した。
その様子に補足が必要な事を気づいて、ジョカは口を開いた。
「俺はリオンと一緒にいたい。そして、リオンと一緒にいたら、お前にさわりたくなる。でも、俺たちの関係は一時のものじゃないだろう?」
リオンにとっても当たり前のことを言われ、リオンは疑問をもって見返した。
「俺はこの先もずっとリオンと一緒にいるつもり。そうなると、長い付き合いになる。それだけの間、お前に触らずにいるのは無理。だからそういう事をしても負担のかからない方法で、しよう。長く一緒にいるために」
長い間、ずっと一緒にいるためには、様々なところに配慮が必要だ。
ほんの少しがまんすることで、長くいられるのなら、その方が絶対いい。
そう言うジョカの言葉に、リオンは感心するとともに感銘を受けた。
ジョカはリオンなどよりずっと大人だった。
ほんのちょっとずつ、お互いに譲り合えばずっと幸せでいられる。
その言葉に、リオンは素直に頷いたのだった。
ごめんなさい(平謝り)。
BLは「ふぁんたじい」なのでそんな事は考えなくていいんだよ、という意見に私も賛成なのですが、「年老いて天に召されるその日まで一緒にいる」ためにはこういうお互いの体への配慮も必要だよなあと思い、つい書いてしまいました。
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