ひさしぶりの更新が読書感想でスミマセン。
現在体調不良が極まっておりまして。
パソコンで文字を書くのがつらい、そういう時期でした。あ、精神的ではなく身体的に。
その具合の悪さに執筆から遠ざかり、平和で平穏?に通院と入院と退院を繰り返す、療養生活をしていたのですが――
私の中で私が言うんですよ。
「病は気から!」
と。
また、大嫌いな病院巡りをしても病気の元がわからないんですよねえ……困ったものです。
病院行った結果、別の病気は見つかって手術したり入院したりはするんですが、肝心の現状の不調の改善にはつながりません。
確実に体はヘン。
でも病院いっても何ともないという。
じゃあ、これってば自分の気の持ちようってやつじゃない?
と、自分のなかで囁く声がありまして。
そうなのかも……私の体の具合の悪さって、ペットロスからくる単なるストレス由来の症状――つまるところ気のせい、だったりするのかなあ、なんてぐるぐる思ってしまったので、
頑張ることにいたしました。
ですが頑張るとは言っても、愛猫が死んでから数年何も書いていなかった私は危惧したとおりの状態になっておりました。
書けない。
毎日毎日少しずつ何でも書かなければいけないと思っていました。
そうしなければ書けなくなると。
どうやらそれは真実だったようです。
少しずつ頑張ります。
ごめんなさい、これが精いっぱい。
そこで、手始めに読書の感想を書くことにいたしました。
では、だらだら前置きが長くなりましたが、
彩雲国秘抄 骸骨を乞う 角川文庫バージョン の感想をお送りします。
この「骸骨を乞う」、には様々なバージョンがあります。
最初に発行された、ハードカバー本。
それを文庫に落としたビーンズ文庫版。
さらにそれに書き下ろしが加えられた、角川文庫版です。
書き下ろしが付いているのはこの角川文庫版だけで、数年後のいまそれを知ったので八方手を尽くして何とか(というほどでもない?)手に入れました。
では感想です。
……あ、本編読んでもやもやしていたものがわかった!
この本は彩雲国物語という長いシリーズの番外編のようなものなのですが、じつは私は本編を最後まで読んだ後だいぶもやもやしていたんです。
でも、その頃の私にはその「もやもや」がうまく整理できず、自分でもわからなかったんですね。
ようやっと、もやもやが言語化できるまで昇華できました。
言ってみればものすごく単純なんです。
――劉輝より敵の旺季の方が、血筋でも政務能力でも人望でも人徳でも実績でも遥かに上なのに、なんで劉輝が勝ってめでたしめでたしなの?
という。
いや、皆さん思いませんでした?
劉輝なんぞが王様でいるより、旺季の方が百倍ぐらい王様にふさわしい。
って。
劉輝が彼に勝っているところって、どこかあります?
なんにもないですよ。
今より良い国をつくろうという意志の強さすら、旺季の方が上ですから。
嫌いなもののために頑張れる彼には勝てません。
主人公側だから、という身もふたもない理由で最後勝ったような気がとてもします。
ありとあらゆる要素で劉輝に勝っている敵役が、旺季です。
そしてその旺季に、劉輝はひょっこり勝ちます。
しかし私の目から見て、どこをどうみても旺季の方が王にふさわしいと思ってしまったので、私はもやもやしていたんですねー。
あらゆる面で主人公側より優れた敵なのに、あらゆる面で敵よりへっぽこな主人公側が勝つってどうよ?
と、思ってしまって。
でも読んだ直後はそのもやもやの原因がわからず、ただもやもやしていました。
その大きな理由は、旺季に感情移入できなかったためです。
旺季に劉輝が唯一勝っている点があるとしたら、読者からの好感度です。
一巻から出ている主要キャラなので、さすがに後半で出てきた旺季(感情移入できるようなエピソードほぼなし)とは好感度が違います。
ナンダカンダ言っても、読者の人気投票やったら劉輝が圧勝しますよ。
私もそれは同じです。
劉輝の方がずっと好きなので、劉輝が勝ったのはいいんだけど、いいんだけど、でもなあ……なんかもやもやするなあ、という感じで、自分でもわからないもやもや感が残ってしまったのでした。
劉輝の方が好きだから劉輝に肩入れしたい。
でも客観的に見て、どっちが王にふさわしい? どっちが優れてる? こんな風に勝って、いいの?
となってしまったのでした。
今回の骸骨を乞うは、そんな旺季側の重要人物ふたりに深く踏み込み、その足跡をたどった上で、彼の最期が描かれます。
いちばん気に入ったのは、凌晏樹の短編です。
本編で内面を詳しくは書かれなかったキャラなので無罪放免に違和感あったのですが、納得。
すがすがしいほどのヤリタイホーダイの極悪非道っぷり。
ああ、なるほど。こういう人間だったのか。
ひとことでいえば、気まぐれかつ身勝手な大量殺人鬼です。
顔と頭だけはとびきりいいので始末におえない。
そんな凌晏樹が唯一自分の掟を曲げて従ったのが、旺季。
無辜の人を殺しても、そんなことで晏樹が反省なんてするはずありません。
最後で彼がおとがめなしになったのは、ただ単純に彼がとびきり頭がよくて証拠を残さず、尻尾を出さなかったから。
シンプルな力の力学ですが、それだけに私の中ではすとんと腑に落ちたのでした。
いや、前々から物語でよくある「悪事をやったけど、反省したからおとがめなし」っていうのは「ちがうだろー」と私は思っていたんです。
それに比べればはるかに、「悪事をやったけど、相手が一枚上で証拠が何もないからおとがめなし」の方が納得いきます。
晏樹が反省? 後悔? うんうんしっこないって。
晏樹がそんなのやったら人格豹変薬でも呑まされたのかと思うところです。
性格を知ったあとで晏樹が出てきた当初、秀麗とのんきに桃を食べているところをみると……「にげてー、秀麗逃げてー!」としか思えません。
火薬庫の前で火遊びしてたんだよ、きみ。
そんな晏樹や悠瞬のエピソードが書かれることで、旺季も好きになりました。
心理的に劉輝に一方的に肩入れしていたのが、最終巻を読んで数年経ったことと、旺季にも感情移入することで天秤が正常に近づいて、そうすることでやっと「最終回後のもやもや」を言語化できるくらい距離をとることができたのでした。
あー……やっぱり人間って、好きな人間が勝つ展開だと、多少の理不尽は目をつむっちゃうんだなあ。
そして角川文庫版の限定書き下ろし中編は、秀麗の残した娘が描かれます。
母より祖母に似たのか、絶世の美少女に育ち、かつ秀麗ゆずりの行動力も持ち合わせています。
彼女と劉輝の旅のお話です。
劉輝の側近三人の最期もほんのちらりと匂わせます。
彩雲国物語をずっと読んできた人が読むぶんには損はしないお話だと思います。
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Thema:読書感想文
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