こんにちは、五十嵐早苗(いがらしさなえ)と申します。
何と言いましょうか、割とありふれたお名前であると思っております。お陰さまでクラスメートの半分以上の名前が「何て読むの?」と担任の先生に聞かれるこのご時世で、わたくしがそう聞かれたことはありません。
両親には読みやすい名前をつけてもらって感謝しておりますし、名前に恥じない波風ない人生を送ってまいりました――が。
――そんな私の目の前には、今現在、お化けがいます。
がっつりと凝固した私の目の前、鼻先五十センチというところでしょうか、至近距離におられるそのお化けさまは、えー、人型をしていたら幽霊という呼称が似合ったでしょう半透明の色合いで、後ろの景色がかなり鮮明に見えます。
えー、果物100%ゼリーを百倍ぐらいに薄めたぐらいの半透明といいましょうか。色はうすーいオレンジですね。
そして、人の形をしておりません。
「半透明のおばけ」というしかない、不定形のぐねぐねのぐちゃぐちゃの形をしております。
え、ええーと、どうして私がこんなエイリアンと近接遭遇しているのかと申しますと、ですね。
一分前、突然足元に穴が開いて転がり落ちました。
以上、おしまい。
気がついたら目の前にぐねぐねお化けがいたという現状です。
見た目の質感はフルーツゼリー。
いやあ触ったらヒンヤリ冷たくて美味しそうデスネー……。
……現実逃避はこのぐらいにしておきましょう。
ぐねぐねお化けはぐねぐねしながら私を取り囲み、ぐねぐねと踊っております。
さすがに、ですね。
一分もそんなことをしておりますと、多少のフリーズ状態も解除されてまいりまして。
私ははたと気づきました。
――ひょっとして、このぐねぐねは私に何かを伝えようとしているのでは!?
ナイスでグッドな考えです。
考えてみれば言語ランゲージと同じくボディランゲージは大事です。異文化交流の基本中の基本です!
このぐねぐねお化けが何やら踊りながら私の周囲を廻っているのは、何かボディランゲージで伝えようとしているのでは……。
…………。
目の前にはぐねぐね踊りを繰り広げているぐねぐねさん(色は薄橙)。
――わかるかあああ!
何かを言おうとしているとしても、わかりませんてば!
ついでにいうと、あまりにぐねぐねさんのインパクトが大だったので気がつきませんでしたけど、ここ、ひょっとしなくても森じゃないですか?
「あ、あのお!」
ぐねぐねさんは私の周りを踊っておりますが、外が見えないわけではありません。ぐねぐねさんが通り過ぎた後は外が見えます。
鬱蒼とした木立が見えます。あと足元の地面も草を靴で踏みつけている状態です。
どういうことでしょうか?
私はついさっきまで、アスファルトの道を歩いていたはずなんですが……。
「すみません、ここどこですか!? あ、あなたは一体誰なんですか? どうしてわたしはここにいるんですかあっ!?」
最後、叫んでしまいました。
涙もちょっと出てきました。
鼻先五十センチのところにいるぐねぐねさんのインパクトが大すぎて、今の今まで現実逃避していて考えないようにしていたことです。
――このぐねぐねさん、なに?
――ここはどこ?
――私はどうしてこんなところにいるの?
考えれば考えるほど泣きそうになってきた私をある意味救ったのは、ぐねぐねさんでした。
彼(?)は、私の周りで踊るのをやめると、ひょいと……わたしを持ちあげたのです。
そしていきなり走りだしました!
「きゃああああ!」
悲鳴がドップラー効果で後ろに遠ざかっていきます。
嗚呼……。
ちなみに、ぐねぐねさんの感触は、「幽霊系」だったとだけ言っておきます。抱えられて運ばれているのに、自分から触っても感触ないんですもん! 怖かったよお!
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